老後2000万円不足問題

津田栄 

 7月4日から参議院選挙が始まった。与党自民党は、憲法改正を争点としようとしている。うがった見方をすれば、6月3日に金融庁から公表された報告書が、老後生活において年金だけでは足らず、2000万円が必要という内容だったため、国民からの非難を避けるために、争点をずらそうとする選挙戦略を採ったともいえる。もちろん、野党は、これを主な争点にして戦っている。

 先日、有名な選挙アナリストから選挙予想を聞いたところ、やはりいくつかの選挙区で自民党候補者が苦戦しているとのことである。老後2000万円不足問題は、国民には選挙の大きな争点ということで与党に不利に働いているのだろう。

 政治的にこの問題の是非を言うのを横において、経済、株式市場から見てどうなのかであるが、国民は、年金だけでは十分な老後生活はできないと、明確に示されたから、老後のためにこれまでの生活を改めることが必要になる。すなわち、年金掛け金を支払っている現役も、年金を受け取る定年退職者も、これまでの消費を削って、貯蓄を進め、資産を増やそうと努力することになろう。

 そうなれば、経済は、GDPの6割を占める個人消費を中心に伸び悩み、一段と成長しなくなる一方、物が売れなくなることからデフレ傾向を強める可能性がある。その結果、日本経済はさらに沈滞し、ますます衰退していくことになるかもしれない。

一方、今の金利では貯蓄しても、資産がどんどん増えることが望めないので、多少はリスクをとっても、国内の株式や債券、外国資産を買う動きが出てくる可能性がある。最近証券会社の資産運用セミナーに聴講者が殺到しているのは、この老後2000万円不足問題が影響しているとの解説もある。いずれにしろ、株式市場にはこの問題によって株式需給にはプラスに働きそうといえ、堅調になる要因になりうる。ただし、高齢者が老後生活に必要な資金を確保するために保有する株式を売却することもあるから、あまり大きな期待をしない方がいいのかもしれない。

Tsuda Sakae
経済評論家(WASEDABOOK)


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